精神疾患といってもいろいろなものがありますので、一概には言えませんが、回復期にあるからといって無茶をすると、大変なことになってしまうこともあります。例えば、うつ病の場合は、自殺率は回復期にも比較的高いのです。大丈夫と思って無茶をしてしまい、しかし思うように動けないことで、余計自分を追い詰めてしまう、とか、そういうことだろうと思います。
その方は、ご自分の状況を把握しているとご自身は思っていらっしゃる、ということだと思いますが、病気の種類や重さによっては、ご自身でどの程度いろんな活動ができるかという認識が難しいこともあります。周囲の素人(非専門家)の目からも、わかりにくいことも多いです。ですから、まず、ドクターときちんと相談をされることが大切だと思います。どの程度の仕事ならやっていけそうなのか、ということです。そして、それをふまえたうえで、障害者雇用か一般雇用かということを選択されるのが良いと思います。ひょっとすると、そのどちらが良いのか、ということについても、ドクターからアドバイスがいただけるかもしれませんね。そうしたこと全般について、医師から信頼できるアドバイスがもらえない場合は、病院を変更される方がよいでしょう。
また、障害者職業センターなどに一旦相談されるのも、ひとつの方法だと思います。地域の状況も踏まえて、有益なアドバイスがいただけると思います。
障害者雇用、一般雇用ともに、メリットもデメリットもあります。
障害者雇用では、まず、給与という面では一般雇用より低い可能性が高いです。最低賃金は保証されますが、それ以上になるかは企業次第です。しかし、障害者雇用で採用された場合、その企業の体質にもよりますが、障害ゆえの困難についての配慮を受けやすいです。例えば、調子が悪くて休みたい、ということについても、おそらく休ませてもらいやすいだろうと思います。但し、企業側がそうした姿勢を元々持っていない、単に数あわせだけで採用しているという質の企業の場合は、それも期待できません。
しかし、一般雇用の場合、障害ゆえのしんどさに対しては、基本的には一切配慮は期待できません。精神疾患といっても本当にいろんな種類があるので、どういうケースかにもよりますが、例えばパニック障害などで発作の頻度が下がっている、という程度の場合は、一般雇用で就労しても、職場で、あるいは通勤途中で発作が出てしまったりした場合に、一般雇用の場合は、いろいろまずいことが出てきます。特に、履歴書の多くには、健康状態を記載する欄があると思いますが、そこに、特に問題なしなんていう記載をしていてそうした発作を起こしてしまった、となると、厄介ごとを嫌う企業の場合、虚偽記載としてくびにする格好の口実になってしまいます。かといって、疾患を記載して一般就労をするのは難しいです…。
しかし、全く別の問題として、精神障害者保健福祉手帳では、就労が難しい場合が多いです。
身体障害者手帳、療育手帳(東京都では愛の手帳という)、精神障害者保健福祉手帳、この3種のうち、身体障害者手帳での就労は、障害の重さにもよりますが、比較的容易な可能性が高いです。それは、手帳を持っていらっしゃる方自身の職業スキルが高い割合が高いことも、関連しています。たとえば、聴覚障害や下肢障害(車椅子使用など)などがあっても、パソコンを利用した事務作業には何ら不自由がないし、弱視などであっても電話応対の作業には全く不自由がない、というようなことが関連しています。
それに対して、療育手帳については、AやB1手帳では一般就労は難しいことが多く、多くのケースではB2の軽度判定の方が、単純作業を求められる工場等で働いていらっしゃる、というような状況です。しかしそれも、自閉症などの重複がある場合は難しかったり、コミュニケーションや対人関係などのスキルが求められたりして、結果的には、福祉作業所に通っている(作業はしているけれども給与は数千円から数万円まで)というケースが多いです。
それに対して、精神障害については、確かに法定雇用率の対象となっているので、企業としては採用することもなくはないのですが、他の手帳種と比べて敬遠されがちです。やはり日本ではまだ偏見が強いんですね。だから、障害者雇用の枠があるからと行って応募しても、精神障害者はパス、ということになりかねないんです。そういう状況を正しいとは全く思いませんが、実際にはそういう状況なので、それを知っておく必要があります。
そうしたことを全て踏まえたうえで、やはり地域差がありますから、その地域の専門家の方に相談されることをお勧めします。何より、病気が悪くなってしまっては元も子もありませんので、そこを慎重に考えられることをお勧めします。